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2025.12.19
こんな「言論探究」をしました
本校で国語科の非常勤講師として勤務している佐藤学先生(静岡新聞社論説委員)から、寄稿をいただきました。ご一読ください。
こんな「言論探究」をしました
国語科非常勤講師・佐藤学

年が明けると高3は特別プログラム・家庭学習なので、担当する「言論探究」(6A、6C選択)は先日、「大自在書き写しノート」改め「大自在〝探究〟ノート」を提出してもらい、授業は中締めとなりました。

「受験と人生に役立てる国語実技」を掲げ、無謀であっても無責任なことはできないと奮い立った日が思い出されます。新聞記事を通して社会に目を向け、言葉と文章を磨く体験をしてほしい。知的好奇心と探究心をもち、賢明な判断ができる女性になってほしい。やりたいことははっきりしているのにやり方が分からず、試行錯誤を繰り返してきました。

チャンスがあれば言葉や文章の授業をしてみたいという思いは随分前からありました。論説記者になったばかりのころ、高校の国語の先生が書いた新書を読んで思いを強くしました。自分も高校時代にこんな授業を受けたかった、と。

例えば、このような話題がありました。「海岸通」(1975年、作詞・作曲伊勢正三)は港町と出航の情景が目に浮かぶ名曲ですが、歌詞にある「別れのテープは切れるもの」と「気づかなかった」のは「私」か「あなた」か。本の解説を読み、言葉を味わい考えることの面白さを改めて感じました。

そんな伏線もあって書いたのが先日のコラム「大自在」デジタル版「この鐘を鳴らすのは…」です。記事に添えた写真から、一義的には「この鐘」はハンドベル、「鳴らすのは」静岡英和のハンドベル部。ですが、もう少し踏み込んでもらうために梵鐘や銅鐸、音や音楽の精神的効果に話を展開し、和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」(1972年)で締めました。高3生たちに「次に希望の鐘を鳴らすのはあなたたち」と伝えたかったからです。

「鐘」は物理的なものか、精神的なものか、「あなた」とは誰のこと…。その「あなた」は今、目の前にいるのか、回想の中など離れたところにいるのか…。解釈の余地が広い歌詞だと思います。

静岡英和の授業日のうち、1時限目の日が2週に2日ありました。これも幸運で、朝の礼拝を最後列で見せていただくことができました。祈りと感謝。天井の高い神聖な空間でオルガンや賛美歌を聴いて、校長先生たちのお話を聴いて、心が洗われる思いがしました。それを神と言うか仏と言うかは人それぞれでしょうが、目に見えない大きな力を感じ、心が穏やかになる体験をしました。今の私にとって、それを1字で表せば「縁」です。

受講してくれた諸君へ。言論探究の授業では5月、「私の名前の由来」をテーマに作文をしてもらい、選択的夫婦別姓制度の論点の理解を図りました。その時、後期には「私の好きな歌」で書いてもらうと予告しましたが、終業のチャイムが鳴っています。よければスマホをいじるついでに「海岸通」「あの鐘を鳴らすのはあなた」を聴いてみてください。昭和の歌もいいですよ。

少し早いですが、1年間、ありがとうございました。

(静岡新聞社論説委員=寄稿)

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