2025.07.19
ベテラン記者は新米教師
本校で国語科の非常勤講師として勤務している佐藤学先生(静岡新聞社論説委員)から、授業の所感をいただきました。ご一読ください。

ベテラン記者は新米教師
国語科非常勤講師 佐藤学
「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語で、使い方が難しい敬語です。例えば店頭の張り紙「本日は休業させていただきます」は「本日は休業いたします」でいい、というのがよく挙げられます。適否の分かれ目は「許可」「恩恵」と解説されます。その行為に許可が必要とされるか、そうすることによって自分が恩恵を受けるかの2点を満たすことが条件などと説かれます。
本年度、6Aと6C(選択)でそれぞれ週2コマ国語「言論探究」を担当〝させていただいて〟います。ふだんは静岡新聞の社説や1面コラム「大自在」、署名コラム「想考」「D(デジタル)大自在」などを書いています。
新聞社の定年(60歳)を前に就活のようなことする中、教職単位を取得していたこともあり、本校の非常勤講師に応募しました。採用に当たり教員免許を取得。名実ともに「ペーパーティーチャー」です。ベテラン記者(英語でベテランは「退役」も意味します)は新米教師。しかも担当は教科だけ。4カ月たっても地に足が着かず、授業では毎回、もどかしい思いを募らせています。さりとて老練も駆け出しも記者は記者、患者が執刀医を選べないように、生徒の前では教師を自覚しなければと思って回数を重ねてきました。
寛容なことに学校から細かい指示はなく、科目名の「言論探究」を「国語実技」に読み換えて教壇に立っています。不遜と言われるのは承知で目標は高く、①社会に関心をもつ②作文の苦手意識をなくす③受験と人生に役立てる国語ーを掲げました。授業では毎回、最近の新聞記事を紹介。実技科目ですからワーク中心に進め、①専用ノートを使う大自在の書き写し②200字意見文③300~600字程度の作文・小論文ーと、生徒にはこの科目は「書く国語」だと言っています。
大自在の書き写しは、書き写しが目標ではなく、探究学習の端緒にしてほしいと呼びかけています。その中間報告を先日、「デジタル大自在」で配信しました(紙面掲載は7月15日付6面)。
運動能力やデザインの才能など、個人差は否めません。しかし努力とコツをつかむことで上達します。国語力も、反復練習と慣れで自信をつけることで必ず高められると、新聞社で経験則を得ました。受け売りではありますが「国語は知的実技科目」。静岡英和では実践を通して、これを確かめたいと思っています。
これも慣れでしょう、「せんせい」と呼ばれることに抵抗がなくなってきました。慣れることの危うさを自戒しつつ、張り切って、なりきって、いただいたチャンスを生かします。
(静岡新聞社論説委員=寄稿)
国語科非常勤講師 佐藤学
「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語で、使い方が難しい敬語です。例えば店頭の張り紙「本日は休業させていただきます」は「本日は休業いたします」でいい、というのがよく挙げられます。適否の分かれ目は「許可」「恩恵」と解説されます。その行為に許可が必要とされるか、そうすることによって自分が恩恵を受けるかの2点を満たすことが条件などと説かれます。
本年度、6Aと6C(選択)でそれぞれ週2コマ国語「言論探究」を担当〝させていただいて〟います。ふだんは静岡新聞の社説や1面コラム「大自在」、署名コラム「想考」「D(デジタル)大自在」などを書いています。
新聞社の定年(60歳)を前に就活のようなことする中、教職単位を取得していたこともあり、本校の非常勤講師に応募しました。採用に当たり教員免許を取得。名実ともに「ペーパーティーチャー」です。ベテラン記者(英語でベテランは「退役」も意味します)は新米教師。しかも担当は教科だけ。4カ月たっても地に足が着かず、授業では毎回、もどかしい思いを募らせています。さりとて老練も駆け出しも記者は記者、患者が執刀医を選べないように、生徒の前では教師を自覚しなければと思って回数を重ねてきました。
寛容なことに学校から細かい指示はなく、科目名の「言論探究」を「国語実技」に読み換えて教壇に立っています。不遜と言われるのは承知で目標は高く、①社会に関心をもつ②作文の苦手意識をなくす③受験と人生に役立てる国語ーを掲げました。授業では毎回、最近の新聞記事を紹介。実技科目ですからワーク中心に進め、①専用ノートを使う大自在の書き写し②200字意見文③300~600字程度の作文・小論文ーと、生徒にはこの科目は「書く国語」だと言っています。
大自在の書き写しは、書き写しが目標ではなく、探究学習の端緒にしてほしいと呼びかけています。その中間報告を先日、「デジタル大自在」で配信しました(紙面掲載は7月15日付6面)。
運動能力やデザインの才能など、個人差は否めません。しかし努力とコツをつかむことで上達します。国語力も、反復練習と慣れで自信をつけることで必ず高められると、新聞社で経験則を得ました。受け売りではありますが「国語は知的実技科目」。静岡英和では実践を通して、これを確かめたいと思っています。
これも慣れでしょう、「せんせい」と呼ばれることに抵抗がなくなってきました。慣れることの危うさを自戒しつつ、張り切って、なりきって、いただいたチャンスを生かします。
(静岡新聞社論説委員=寄稿)
